Column
Our Roots

 30 Jun, 2017    The Go Getter /The Figgs
 
 
 
 イケベ楽器が経営するPlayer's Club IkeBECKは、秋葉原駅から昭和通りを超えた裏通りにある30席程度の小さなレンタルホールだ。「平日5時間で21,600円キャンペーン」をやっている学生バンドがバイトで小遣いためて使えるような庶民的なスペースで、幸町バンドと年末ライブを開催するようなライブハウスと広さはそれほど変わらない。
6/20、そんなちっぽけなホールに "The Figgs" がやってきた。
 
 
 The Figgsは1987年から活動しているNew York出身の3人組ロックバンド。30年間の活動で15枚のスタジオ・アルバムをリリースしているがメジャーヒットは1曲もなく、恐らく洋楽ロックファンでも知っている人は少ないだろう。パワーポップマニアの間ではコアなファンがいるらしいのだが、The WhoのPete Townshendが言い出したらしいパワーポップというそのカテゴリー自体いまひとつよく分からない。
 Figgsで最も有名なのは、パブロックの大御所Graham Parkerとの1996年からの活動である。 2005年の”Songs of No Consequence”, 2006年の”103 Degrees in June”ではバックバンドとしてクレジットされている。MGが彼らのことを知ったのは、”Graham Parker & The Figgs Live at the FTC” という2010年にリリースされたDVDだった。80年代のGraham Parker & Rumor絶頂期のパフォーマンスに比べParker自身の勢いがないものの、バックを務めるFiggsの堅実な演奏が印象に残っていた。そのDVD以後Figgsのソロ活動をフォローしていた訳ではなかったが、来日公演の情報を知りチェックした彼らの最新オフィシャルビデオ ”The Go Getter”のポップで清々しいギターサウンドに感じるものがあり、あまり期待できないかもしれないが「もしかしたら?」と思いながら会社の帰りに秋葉原に寄ってみることにしたのだった。
 
 
 開場時刻19:30にIkeBECKについたが、観客は10人程度、それも自分を除く全員が顔見知りの音楽仲間のように会話をしていて、1人アウエー状態であり場違いな気がして居心地が悪い。とりあえず最後列の角の丸椅子に座りビールを飲んでいると、開演時間には30人程度の椅子席が満席になり数名の立ち見がでるくらい観客が集まった。
 Figgsの3人組が登場、オープニングからのアップテンポの2曲 ”Gimmicks” 、”Your Smile Is a Deadly Thing” で、彼らがただものではないことをすぐに実感した。スタジオに毛の生えた程度の小さなホールに充満するド迫力のPete Donnellyのベースの音圧、顔つきも演奏もパワフルなPete Hayesのドラム、パンクロックの歴史を昇華させたようなMike Gentギターストロークに圧倒される。30年間で培われた3人で紡ぐビートの一体感は、アリーナコンサートで懐メロを奏るそこらの再結成メジャーバンドを凌駕していた。3曲目の ”The Go Getter”の上手いとはいえないが味のあるPete Donnellyのボーカルを聴けて早くも幸福感で一杯になり、休憩挟んで2時間を超え29曲を披露してくれたThe Figgsの熱く素晴らしいステージは感動に包まれ終了した。
 
 
 
 Figgs初来日ツアーは、6/20秋葉原を皮切りに6/22島根江津光前寺での公演が行われ、福岡、大阪、金沢、富山、新宿、鎌倉でのライブが予定されている。チケットの料金は2000〜5000円(秋葉原IkeBECKは前売4000円)とバンドへのギャラが心配になる程低価格に設定されており、光前寺でのライブは料金の明示がなく、「喜捨 お寺へのお志をお願いします」となっているのが洒落ている。
 
 今回の来日は鎌倉のCafe Goateeのプロデュースにより実現した。1966年のBeatles来日から51年、洋楽不振といわれながら、Figgsのような地道に活動をしている無名に近い実力派ロックバンドの全国ツアーの企画が実現しそれに答えるロックファンがいるのだから、日本にも確実に真のロック文化が根付いているのかもしれない。
こんな素敵なライブを企画してくれたCafe Goateeに改めて感謝したい。
 
 
(MG)


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