Column
Our Roots

 30 April, 2016    Waterloo Sunset /The Kinks
 
 3年ぶりの欧州。
 Paris からユーロスターで Londonに入り、Gloucester Road 駅前にある Crowne Plaza Hotel に8日間滞在した。4月中旬だというのに London はまだコートを手放せないくらい寒く、雨にもよく降られ体調は下降気味だった。それで、同僚から”Rolling Stones exhibitionism” に誘われても最初はあまり乗り気ではなかった。会場はホテルから地下鉄2駅と聞いて、重い腰をあげて行ってみる事にしたのだった。
 
 
 Sloane Square 駅から徒歩3分程度で Saatchi Gallery に到着。会場はそれなりに賑わっていた。カップルに交じって子供を連れた来場者も多い。London では家族揃って Stones の歴史を学ぶ時代になったのだ。展示の内容もデビュー前の Mick、Keith の生活やバックステージの再現、ギターの展示など見ごたえがあり、予想以上に楽しめた。ふと3年前 Victoria and Albert Museum で開催されていた回顧展 “David Bowie Is” が現地のスタッフの間で話題になっていたのを思い出した。London の人々は彼の突然の死をどのように受けとめたのだろうか?
 
 
 Sloane Square からの帰り道、地下鉄の駅で Kinks のポスターを目にした。”Sunny Afternoon”というミュージカルの宣伝である。Kinks の曲をバックに Ray Davis の半生を描いたミュージカルで、2014年から上演を続けているという。Stones の展覧会はいつか日本でも観れるかもしれないが、Kinks のミュージカルが日本で上演される可能性はゼロに等しく、時間の都合がつかないのが残念だった。それにしても Kinks は Londoner において未だに特別なバンドである事を実感したのだった。
   
 我々の世代(Beatles デビュー前後に生まれた世代)の多くにとって Kinks を初めて身近に感じたのは、Van Halenの“You Really Got Me"(78年)、Pretendersの”Stop Your Sobbing”(79年)といったカバーバージョンのヒットではないだろうか?その影響か80年代の Kinksは USマーケットをターゲットにしたプロモーションを展開し、”Come Dancing”などがMTVでも頻繁にオンエアされていた。80年のライブアルバム“One for the Road”は日本でもプロモーションされ、レンタルレコード店経由でMGが最初に聴いた Kinks のアルバムとなった。”Lola”, ”Celluloid Heroes” “Misfits”といった曲が当時のお気に入りだったが、アメリカンロックを意識したサウンドは中途半端な気がして、その後彼らへの興味は長続きしなかった。いかにも英国的な皮肉たっぷりの60〜70年代 Kinks のおかしな魅力に気づいたのは、それからずっと後のことである。
 
 
 2010年 Ray Davis が Kinks のセルフカバーアルバム”See My Friends”をリーリースした。Springsteen や Mumford & Sons、Jon Bon Jovi や Metallica などのアーティスト達と共演し、Kinks の代表曲を演じる楽しいアルバだ。 Paloma Faith との”Lola”や Lucinda Williams との”Long Way From Home”も聴きどころだが、中でも、Jackson Browne と共演の ”Waterloo Sunset”が大好きだ。2人のハーモニーが絶妙に交差し8千7百キロ離れた風景をブレンドさせる。
 67年発表された Kinks の6枚目のアルバム”Somthing Else”収録の”Waterloo Sunset”は、英国人にとって特別な感情を呼び起こす曲だ。David Bowie、Paul Weller、Peter Gabriel を始め多くのUKミュージシャンがカバーしている。Ray Davis 自身もロンドンオリンピック閉会式でこの曲を歌い、会場は大合唱で盛り上がっていた。 この曲ほど日米英の人々で想い入れが異なる曲はないかもしれない。最初に”Waterloo Sunset”を聴いた時、正直あまり印象に残らなかった。だが多くの Kinks の名曲と同様に、その世界を理解し聴き続けていくうちにじわじわと味が出てくる。特にこの曲の歌詞は Londoner を魅了する特別な情景がある。主人公がひとり窓から眺める世界、そこに配置されるのはテムズ川と夕陽、慌ただしく行き交う人々、そして恋人たち。
 
Dirty old river, must you keep rolling
Flowing into the night
People so busy, makes me feel dizzy
Taxi light shines so bright
But I don't need no friends
As long as I gaze on waterloo sunset
I am in paradise
 
Every day I look at the world from my window
But chilly, chilly is the evening time
Waterloo sunsets fine
 
Terry meets julie, waterloo station
Every friday night
But I am so lazy, don't want to wander
I stay at home at night
But I don't feel afraid
As long as I gaze on waterloo sunset
I am in paradise
 
Every day I look at the world from my window
But chilly, chilly is the evening time
Waterloo sunsets fine
 
Millions of people swarming like flies round waterloo underground
But terry and julie cross over the river
Where they feel safe and sound
And they don't need no friends
As long as they gaze on waterloo sunset
They are in paradise
 
Waterloo sunsets fine
 
 
 テムズ川の流れを背景に Westminster Bridge から望む Waterloo Bridge までの風景はいかにも London らしく、晴れた日はとても気持ちがいい。London の人々はこんな情景の中で青春を謳歌し年老いて行くことを "Waterloo Sunset"の詩に重ね合わせているのだろうか?そんなことを考えながら、2度目の London 8日間の滞在を終えた。
 
(MG)


| Prev | Index | Next |



| Home | Profile | Collection | Column | リンク集 |