Column
Our Roots


 21 August,2012    I Fought The Law / The Clash
 
8/21はJoa Strummer の生誕60年。記念アルバムや各地でイベントが企画されている。彼が心臓発作で亡くなったのは10年前の2002年、"Clash"解散の6年後、彼がちょうど50歳のときだった。
 
パンクロックがロンドンで爆発したのは1977年、当時中学3年生くらいか?高校時代、パンクの存在は音楽誌で知っていたが、新宿あたりに出没していた安全ピンの兄ちゃんの服装に違和感を感じ、なんとなく馴染めずにいた。また、やたら早い縦ノリのビートにも戸惑いもあった。
大学生になって、学園祭などでパンク風なラディカルな日本のロックバンドに触れる機会が増え、パンクロックの魅力に夢中になった時期があった。
中でも当時お気に入りだったのは、"Sex Pistols"や"Jam"、それに"Clash"だった。当時自分達のバンドのライブで、"Sex Pistoles"や"Tom Robinson Band" をやった事もある。
(メンバーは、ボーカルがOGで、ベースがSが丘中野球部出身のA島氏、ドラムはなんとRyoji 氏!彼は覚えているだろうか?)
 
ロンドンのパンクバンドの中も、"Clash"は特別だった 。"Jam"の本質はModsだったし、"Sex Pistoles" はフラストレーションをアイロニカルに叫んで、2年もたずに解散していた。70年代末に勢いよく沸き上がった多くのパンクバンドが短命で消えていった中で、"Clash"はパンクからそのスタイルを変化させながらも、真正面から社会の矛盾と格闘し続けていた。
 
1982年1月、新宿厚生年金ホールで彼らのステージを見た。過密スケジュールやJoe Strummer の体調不良、メンバー間の不協和音などコンディションはひどい状態だったようだが、ステージは圧倒的だった。これほどエネルギーに満ち溢れたライブは、それ以来経験できていない。彼らの世界に対する叫びをリアルに実感した奇跡のような体験だった。
 
しかし、来日後の彼らは、徐々に崩壊に向かっていく。
当時の迷いが反映されたアルバム"Combat Rock"からのシングルカット、"Rock the Casbah"が初のUSチャートトップ10入りを果たす。しかし、商業的成功とピュアな体制批判との自己矛盾に耐え切れず、彼らは疲弊していく。83年"Clash" が Mick Jonesを解雇した時、ひどく失望を感じた事を覚えている。それをきっかけに、パンクバンドへのMGの興味は急速に失われてしまったのだった。
 
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79年にリリースされた"I fought the low " は、"London Calling"リリース前の、まだ楽天的だった"Clash "の代表的なナンバーのひとつ。来日したステージでも演奏され、会場は大興奮だった。
オリジナルは60年に発表された "Crickets "(Buddy Hollyのバックバンド)による曲で、"Bobby Fuller"など多くのミュージシャンにカバーされている。(日本では NissanのSUV "X-TRAIL"のCM でリバイバルした) "Clash "のバージョンは、まるで彼ら自身のために作られた応援歌のようにも聞こえる。
 
Breakin' rocks in the hot sun
I fought the law and the law won
I fought the law and the law won
 
I needed money 'cause I had none
I fought the law and the law won
I fought the law and the law won
 
明るいメロディだが、歌詞は絶望的な内容になっている。それでも"Clash"のポジティブな演奏からは、
「俺は法と戦って、そして法が勝った。
・・・・それでも俺たちは、法と戦い続ける」
とでも言っているかのようだ。
 
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救世主ハリストス大聖堂でプーチン大統領批判の「パンクの祈り」を大音量で演奏して逮捕されたロシアのパンクバンド「プッシー&ライオット」が裁判で実刑判決を受けたのが、最近大きく報道された。"Clash"とメジャーデビュー同期、元"Police"のStingが、有罪となった彼女達の釈放を訴えている。もし、Joa Strummer が生きていたら、どんなメッセージを送っていただろうか。
 
政治的メッセージを手っ取り早くストレートに発信する表現手段として、パンクロックは時代や地域を越えて今も存在している。まだまだ世界には、理不尽な法が支配する場所が多くある。そんな中では、法との戦いに勇気を与える音楽は、これからもずっと必要とされ続けていくのだろう。
(MG)


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