Column
Our Roots


 26 November,2013    Walk on the wild side / Lou Reed
 
 先月、新聞の社会面の訃報欄にLou Reedの名前が載った。今年の初めに受けた肝臓移植手術後の容態がおもわしくないという話をMGから聞いていたので、死亡記事がいつ出てもおかしくはないとは思っていた。
Lou Reedを初めて聴いたのは高2か高3、恐らくDavid Bowie関連の雑誌記事やライナーノーツだと思うが、そこで度々New Yorkという都市名とともに言及されるその名前に興味を惹かれたからだ。Disk Unionの中古盤のコーナーで“Rock’n’roll heart”というタイトルのLPを早速買って聴いてみた。が、R&Bの流れを汲むStonesのような、あるいはZiggy stardustのような華やかで煌びやかなサウンドを期待していたOGの予想はみごとに裏切られる。その後“Street hassle”“Berlin”と立て続けに聴いてみてそこで、“これは違った形のRock’n’rollなのだ”ということに初めて気づく。シンプルで硬質な、世界中のどの街とも違うNYの街角や裏通りを音で具現化し表現した世界がそこにはある。
 
 
 大学在学中に詩作を学び、ドラッグやホモセクシュアル、貧困や暴力といったテーマを度々取り上げる彼のボーカルは、歌というよりはポエトリーリーディングだ。抑揚のない語るようなメロディーが大都市の日常を切り取り真実を映し出す。Lou Reedの作品を何か一曲挙げろと言われれば、王道ではあるがやはり“Walk on the wild side”は外せない。NYのトランスジェンダーたちの姿を歌っているが、歌詞もアレンジもどことなくユーモラスで、Jazzyで肩の力が抜けた感じが洒落ている。David BowieとMick Ronsonがプロデュースを担当したことで、Lou Reedのテイストがポップな形で際立った名盤“Transformer”からのシングルである。
彼の残した最大の功績は“attitude”つまり“妥協せず自分のスタイルを貫く姿勢”だとある評論家が語ったそうだが、OGを惹きつける彼の魅力の根本は、まさにその“attitude”にあるのではと考えさせられる、Lou無き世界の今日この頃である。