Column
Our Roots

 31 December, 2018    Sunday at the Village Vanguard & Waltz for Debby / Bill Evans
 
 年末に音楽仲間から「今年行ったライブ」を聞かれ、とっさに答えられなかった。今年はコンサートに行く機会が少なく、かろうじて観戦したのはJazzのライブばかりだった。その宴席にはJazzの話題はそぐわなかったので、それらのライブのことは思いつかなかったのかもしれない。でも今年観たどの演奏もとても印象に残るものだった。
年末ということもあり、簡単にそれらを振り返ってようと思う。
 
 
4月29日(日):JAZZ AUDITORIA 2018
  ・fox capture plan
  ・Edmar Castaneda
  ・BLUE NOTE TOKYO ALL-STAR JAZZ ORCHESTRA Directed by ERIC MIYASHIRO
 お茶の水ワテラス広場 で開催されるフリーコンサートJAZZ AUDITORIA。日本の若手ピアノジャズロックトリオ fox capture plan、コロンビアのジャズ・ハープ奏者 Edmar Castaneda 、ご存じエリック・ミヤシロ率いるビッグバンドの演奏はどれも素晴らしく、気持ちよく晴れた青空の下、ビール&ワイン片手にジャズを満喫した1日だった。

 
 
8月31日(金):東京JAZZ 2018 / the PLAZA(代々木公園ケヤキ並木)
  ・Calmera
  ・東京中低域
 残暑厳しい8月最終日、仕事を早めに切り上げて屋外フリーコンサートに立ち寄った。昨年より国際フォーラムからNHKホール/代々木公園ケヤキ並木開催に変更された、第17回東京Jazzフェスティバルである。本格的なプログラムは土日がメインとなりこの日は前夜祭的な位置づけだが、元気のいい大阪発エンタメジャズバンド Calmera、バリトンサックス12人で編成される東京中低域のユニークな演奏はそれなりに楽しめた。インターバルの時に降り出したにわか雨もすぐに止み、心なしか9月の風を感じながら、スキップ大名のサックスの余韻がケヤキ並木に鳴り響く夜だった。

 
 
11月22日(木):「秋の夜長のJAZZナイト〜JAZZジャイアンツに捧ぐ」/浦安音楽ホール
  ・守屋純子ビッグコンボ
 昨年自宅最寄りの駅前にとんでもない税金を投入して音楽ホールが作られた。「納税者としては一度チェックしなければならない」と思ったわけではないが、日本のジャズピアノの第一人者守屋順子のビッグコンボのライブ開催を知って、仕事帰りに観に立ち寄ってみた。ビッグコンボ全メンバー円熟のソロを繰り広げる素晴らしい演奏だったのだが、飲食厳禁の真新しいコンサートホールで襟を正してジャズを鑑賞するのは少し居心地が悪かった。

 
 
12月14日(金):青山Body&Soul
  ・Tony Lakatos & Ferenc Snetberger
 年末の自分へのご褒美として、今年も師走の金曜日に青山Body&Soulに行った。硬派ハードバップ・サックスプレイヤー Tony Lakatos とジプシー系ギタリスト? Ferenc Snetberger、ハンガリー出身デュオが繰り出す音の波は奥深い年輪を感じさせ、心に染み入る素晴らしい演奏だった。だが残念なことにその名演を目撃できたのはせいぜい20名程度だろうか?閑散とした会場に響く控えめな拍手やグラスの鳴る音を聞いて、ふと Village Vanguard のあの夜に思いをはせたのだった。

 
 
 
 1961年6月25日。ニューヨークの Village Vanguard。 Bill Evans Trio のライブレコーディングが企画された。日曜日の午後から始められたまだ知名度のなかった彼らのライブは満足に客を呼ぶことはできず、親戚や友人などをかき集めて行われたという。そんな無関心な客の前で伝説のトリオの演奏が繰り広げられ、無造作に鳴るグラスの音や雑談の声も記録されたジャズ史に残る名盤が生まれた。
 当初はこの日の演奏を選抜しアルバム1枚をリリースする計画となっており、10月に "Sunday at the Village Vanguard" がリリースされる。だがライブレコーディング11日後の7月6日、ベースのScott Lafaroが自動車事故で急死したことで急遽2枚目のアルバムが企画され、翌年3月、Waltz for Debby がリリースされた。
 美しく穏やかなテーマを題材に、Bill Evans と Scott Lafaroのベース、Paul Motian のドラムが研ぎ澄まされたインタープレイを繰り広げる。この日が最後になるとは想像していなかっただろう彼ら3人の演奏はジャズ史に残る奇跡であり、まさしく神が舞い降りた夜だった。
 
 気分が荒んでくるとジャズの演奏を聴きたくなる。ある意味で予定調和なロックコンサートとは違い、プレイヤーが織りなす自由な閃きとインプロゼーションは心を開放してくれる。
2019年もジャンルに捕らわれない良質の音楽を聴き続けたいと思う。
(MG)


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